三味線の皮張る音や冬の月
| 私の友人に、三味線の竿師がいる、一人はすでの亡くなったのだが、竿師といっても普段は 皮貼りが主な仕事である。 彼らの仕事を見て、「貼る」と書くのが正解なのか「張る」と書くのが良いのか迷う、 「貼る」と書けば、確かに糊で貼っているのである、 しかしその皮は「張る」其の張り工合に善し悪しが掛かっており、 その張り具合に年季がいるのである。 そのための準備も大変な熟練がいる、友人のところは、殆ど猫の皮であるが、 津軽三味線の場合は犬の皮を使っていた。その皮を全体均一な厚さになるように軽石で 削るのであるが、その軽石も何でも良いというわけでもない。 そしてその皮に湿気を与え胴体に貼るのである、 さあこの時迷います。「貼る」と書くのか「張る」と書くのか迷うのです。 張り具合を指の爪で弾きながら音を聞きながら張力を掛けていくのであるが、 これもすべて同じように張ると良いというものでもない。 普段の稽古使用の物、舞台本番の物では張り様が変わる。 舞台本番の時は、破れる限界まで張るのである。 それが職人の勝負だそうである。中には張る時に、 そばについて、もっともっとと、締めさせる師匠も居るそうで、 そんな師匠はもうひと竿用意して本番に臨むそうである。 そうすることによってあの、冬の月の様に澄んだ、そして引き締まった音が響くのである。 その音の変化を聞くのが楽しみで良く作業場を訪れたものである。 普段用は少し緩めに張り永く保つようにしている。 しかしそれが判る人も昔ほどは居なくなったとこぼしていた。 昔は、舞台が終え、二・三日すると皮が弾けて破れることがあるそうである。 そういう具合に張るのがベストなのである。 そうするとそのお客様は、その三味線を、貼り直す来店の折り。 「前回はありがとうございました。本当にぎりぎりまで締めて下さいまして。」と、 金一封の御礼が有ったそうです。 しかし現在では、本場が終え来店され、 「この間貼ったばかりなのに。」と苦情を言う方も居ると、嘆いておられました。 |
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